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「高橋大輔」を好きなだけ語るブログ

氷艶 hyoen2017 破沙羅 感想

5月が氷艶一周年で、色々と素敵な破沙羅の考察を目にする機会があってとても楽しかった。
で、なるほどなーと思いながら見返してみると、今までと違って見える部分が出てきたりして面白い。そして見事ロスがぶり返しました!

氷艶・破沙羅、良かったなあ。
嗚呼観たい。また観たい。見せてくださいーーーー!!!

何も考えずに希望を出すなら、自分が時空を超えてもう一度あの会場の中に座って破沙羅を観たい。でも無理なので…(うぅ、ドラえもーん!)今一番の願いは、地上波での再放送。(あと円盤化)

NHKさんに再放送の要望を出すなら、何て書けば良いのかなと考えてそれを前エントリーに書いてみたけど、そちらは萌えをかなり控えたのでもうちょっと発散したい。
という訳で、別エントリー。

まるでまとまってません。
でも断片的にでも思いをはき出したい。

主に演技の感想

演出・主演の市川染五郎氏(現・松本幸四郎)が、ただもうスゴイ。
まず演出家としてのアイデアの突飛さと実現させる力!度肝を抜かれるってまさにこれ!
ただでさえ忙しい人だろうに、よくこんな事を短期間でやり遂げられるなあ。しかもあんなに楽しそうに。
演技中も慣れないはずのスケート靴をずっと履いていながら貫禄満点の悪役だった。
スケートでの六方とか附け打ち(?)と照明とで一気につくるその花道とか、宙吊りでの宙返りとそれをシルエットで見せる照明とか、すごく楽しい。

大蛇も、まさかあんな大きいもんが空から降ってくるとか思わんもん。しかもスケートリンクを走り回るとか。ビックリしたわー。素晴らしいアイデア

また染五郎さんが演じた悪役・仁木弾正の格好良い事!
仙台萩の恨みがどうとか最初の口上で言ってたけど、そうゆう恨みつらみの湿気は全然感じない。だいたい悪逆非道ってやたら嬉しそうに自分を紹介しちゃってる時点でもうなんか悪い人な気がしないんだけど。
カラッと明るくて頼りがいがあって男らしい色香があって、あれ?理想の男性像じゃない?

ところがこの弾正さん、阿国義経だと分かってから様子が一変していく。執着心なのか競争心なのか猜疑心なのか、心の陰の部分が表に出てくる。この辺の変化がやっぱり上手い。さすがの演技力。

そして岩長姫(市川笑也)。この物語の中で最初から一番、色々な人間らしい(神様だけど)感情を見せてくれたキャラクターじゃないでしょうか。

コノハナとニニギの駆け落ちで岩長姫が一人残されてしまう所、大きな体の動きも表情の変化もないのに、姫の辛さが手に取るように伝わってきてしまって胸が痛い。ニニギの視界に入ろうとあちこち動くけど目に入れてもらえず、やがて立ちすくむ姿が…。

感情移入して悲しんでいたら、悲しんでると思った岩長さんはいつの間にか静かに暗い憎悪をたぎらせて弾正さんを呼び出してるし。
で、弾正さんに会ったらそれでもう上機嫌!更に義経さん見たらすっかり夢中になって超ご機嫌!
岩長ちゃん…もしや重度の面喰いじゃ…。
でも愛情の表し方は歪みまくってるしで。面白い!

それにしても笑也さん(岩長姫)、スケートが上手い!
フィギュアスケーター達と違って上体がピンっと伸びていてほとんど動かず、その状態でスケートのスピードで動き回るからものすごくこの世のものじゃない感じ。あれスゴイ。なんかメチャメチャ怖い。
自分は特に天井席から見下ろしてたせいで、長いスカートに隠れてスケート靴が全く見えなかったから、超高速モーター付きのルンバに乗ってるのかと思うくらいだった。あれに迫られたらホント怖いわ。
義経に迫ってる時の岩長ちゃんは、不気味で無敵でイキイキして見えたなあ。

岩長姫と義経さま

自分が高橋大輔さんのファンなので当然高橋くんのファンの感想を一番多く見聞きするんですが、個人的な印象では、高橋さんファンから一番多くの共感というか同情というかシンパシーを集めたのが、高橋くん演じる義経でもなく、義経の恋人・静御前でもなく、この岩長姫だった。
って!!!戸部さん!これ何の罠ですか??(脚本:戸部和久氏)


登場人物がそれぞれ魅力的で、勧善懲悪のストーリーと言いながら、悪役達にも感情移入してしまう。愛嬌があったり悲しみがあったり格好良かったり、誰も心底憎めない。むしろこっそり応援してしまうとかどうゆう事か。

となると、悪役の個性に善側が喰われてしまうかと言えば、全然そんな事はない!


源九郎判官義経(高橋大輔)さま。
こんなにも必死でお守りしたくなる戦の大将があるものなのか!カッコイイ!というより守りたい!でもカッコイイ!!!なんだろうこの想い。
敵味方男女問わず惹き付けてしまう訳の分からない色香を放つ、強いとも弱いとも言えない不思議なヒーロー。
本人にその気はなくとも、世界の全てを喰ってしまうのはきっとこの人だ。そうゆう魔性を持っている。

召還されて呼び出されるあの場面は、この上ないビジュアル美の結晶だった!
チームラボの艶やかな桜の映像の中から、風のように現れる。
長い髪を結い上げたポニーテール。長衣の裾をはためかせ、鷹の羽が見える鮮やかな鎧衣装。このビジュアルで颯爽と登場するんですよ、高橋大輔が。美が過ぎる…。
まさに麗しの御大将。ビジュアルだけで美の大将、あ、違った、善の大将だと納得させられる説得力。

台詞がないので声が聞けないし、登場してから一切笑わないのでしばらくはイマイチ感情が分からない。呼出されて大喜びだった仁木弾正に比べて、義経さまは召還された事をどう思ってるのか。
でもそのミステリアスさが義経の美に拍車をかけてた気がする!(自分だけかな)

そしてすぐに展開される戦いの場面で、実はやる気満々な事が判明。
止められても止められても自ら闘いたくて仕方がない義経様。そりゃそうか。唐突な呼び出しとは言えやっと腹心の弁慶に再会したっていうのに、いきなりまた失うなんてそりゃないよね。劣勢の中、大将のくせにすぐ前線に出ようとする義経を弁慶と四天王が必死で止める。
血気盛んな義経様。イイ!

けどこれ基本的に、四天王+弁慶+義経 vs タコさんズって事ですよね。わらわらとその他の勢もいるけど、基本的には6対2じゃないの?それでこの劣勢ってちょっとなんか…タコさん達強過ぎませんか?(弱過ぎとは言いません!断じて!)(あれ?言ってる?)

まあいいや。

あと!そう!あの出雲阿国の舞!
息を呑んで食い入るようにして観てた。どんどん手繰り寄せられて目が離せない。ただでさえ異世界の芝居の中で、さらに異界にトリップしてしまうから、何だか訳が分からなくなる。三味線の音に取り憑かれたように踊る謎の演者に釘付けになって、終わった瞬間に今のなに???てなるの。すごい。すごいパフォーマー

歌舞伎方の舞もそうだけど、高橋君この人も、タメと間とトメの達人なんだった。長唄の曲にめっちゃ合う!彼の独特の間は日舞に通じる間だったのか!!?弾正殿も虜になるという筋書きが、あまりにも当然と思う圧巻の踊りの説得力。
よくぞ東京ゲゲゲイを思いついてくれました!そして素晴らしい振付をありがとうございました!


村上佳菜子ちゃんの天鈿女命(アマノウズメノミコト)の演技も良かった❤️
夫役の猿田彦(中村亀鶴)とのラブラブっぷりには幸せのお裾分けをもらった気分で自然と笑顔になる。
あの元気いっぱいの愛らしさは、神様だらけでやたらと厳かになりがちだった空気に、ほっと一息つけるようなアクセントをくれた。あ、鈿女ちゃんも神様だっけ。
スケートも軽快で、足元につけたがとても効果的。
そして弁慶となった猿田彦が往生した時の彼女の悲しみ方には、もう胸が締めつけられた。泣かずにはいられない。
最初の時の軽やかで楽し気な鈴の音が、その音色のまま切ない慟哭の響きに変わる。そして甦りの儀式では、一途な願いの象徴のように聞こえてきた。
一つの音をこんなに多彩に見せてくれる。さすがです!

織田くんの凛々しく高貴な瓊瓊杵命(ニニギノミコト)もハマリ役。
実はこの人、信長級の怖しさと冷徹さを持ってるんじゃないの?って雰囲気も醸し出してていかにもやんごとなき神様。「民の長」感あるある!
役柄としては、そもそも全部アンタが悪いんやーと突っ込まれがちな役所なんだけど、でもでもでも!木花一人が我妻ぞってなんかちょっと一途じゃないですか?神様の割には純粋じゃないか(神様を何だと思っているのか)。二人どうぞって言われたけど一人しか好きになれないから、他の方はお断りするって、なんかあれ?イイヤツじゃない?しかも永遠の命を振り切って、ですよ?

ただまああの…もう少し、もうほんのちょっとだけでも、振られてしまう人への配慮がね…あればね…うん、まあでも終わった事ですから…。

木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)(浅田舞)のまさに花のような美しさはうっとりする。動きが軽やかでいかにも清らかな清潔感。逃げ惑う姿まで優美だった。
でも囚われの身を義経に救われてからは、可憐なだけじゃない芯の強さを感じさせる演技。流れるような殺陣も格好良い!

静御前(鈴木明子)は、義経の心の癒しとしての幻影の儚さだけじゃなくて、大事な時には義経を自分の力で守り自ら刀を持って戦おうとする、めちゃめちゃカッコイイデキル女っぷり。包容力のある凛とした強い女性像なのが素敵!義経さまも惚れる訳だ。

この破沙羅では、女性達が皆ただ守られる側ではなく、自ら戦うお姫様達設定なのが素敵です!
決戦でこの姫二人がペアになって戦う所は胸がキュンとした〜。

そして悪役側の蛇髪姫ですが、荒川静香さんが素晴らしい!
女神やってた時の優雅な人はどこに行ったのか。
和太鼓の力強い音にのって、人間離れした野性味のある動きがカッコイイ!!!
尋常じゃない程軟らかい身体を活かしたその動きが予測不能で、不気味な恐ろしさを醸し出してた。まさに蛇!
5人揃って刀持ってる義経さんズより、素手の蛇髪ちゃんの方が圧倒的に強い雰囲気を出してるもん!!!いやもう楽しそうなこと!!!

ストーリー感想(一箇所だけ)

今頃やっと分かったんかい!とか、それ勘違いや!ってずっこける方もいるかもですが…。

静御前の在り方が、ず〜っとよく分からなくて考えてたんです。
まず、岩長姫に捕えられた義経静御前が助ける場面。
最初は、静さま強い〜〜最強〜〜〜って思ってた。あ、最初っからこの人呼び出しときゃ良かったんじゃない?ってくらい。

だけどあれは静御前義経を助けに来たと言うより、義経様の中にある幻影が実体化したって事なのかな。義経の中にある静の強さ。

SNSでファンの方達の言葉を読んで初めて気づいたんだけど、確かに岩長姫に捕えられたあの場面で出て来た時の静御前は、前半はただ舞っているだけで別段強そうじゃない。(自分、会場では別の方に視線ロックオンだったので…)
それが途中から明らかに、義経様を守ろうとする、取り返そうとする動きになっていった。なるほどな〜。

色々解釈は出来そうだけど、あれは義経の中に住む静御前で、彼の静への想いの強さが静御前自身の想いの強さとなって外に出て来たのかな。
でも岩長姫と対決できる強さじゃなくて、あくまでも義経を邪から守る事に特化した強さなんだろうな。だから義経次第。

で、お互いの想いの強さが重なって力が生まれ、宝鏡を奪い返し、木花さんと瓊瓊杵命を取り戻すという一発形勢大逆転になった、と。
結果、単身で宴会場に潜り込んだ義経様の無謀とも言える単独行動が大成功を収めた訳で、なんだやっぱりさすがは御大将!

本当は弾正にもっと呑ませて酔わせた上で勝負したかったのに、弾正さんが思ったより性急で(でもそれはアンタが悪いんやで〜)それで予定が狂ったんだと思ってたけど、実は大事な宝鏡を弾正ではなく岩長姫が持ってる事も、分かってた上での狙い通りだった?っていやいや、それはさすがに考え過ぎかな。

でも呼び出されたからやって来たのに、弁慶にも四天王にもやたら庇われて思うように戦わせてもらえないし蛇は強いし、自分で動いたら敵に捕えられて、それを静御前に守られて助けられたってなると、大将…同情するなぁって思ってたけど、いやいや、やっぱりあなたの作戦と心の強さがあってこその大逆転劇だった訳ですよね!うんうん。それにまずその捨て身過ぎる作戦を考える所が、やっぱりめちゃめちゃ熱い人だ。

で、最後の決戦では義経に静は見えてるのか?もずっと自分の中で疑問なんですが、これもブログで読んだファンの方のお話がすごく面白かった!そして今の所の自分の推察では、やっぱり見えてない、かなあ。

あの時の静御前義経の幻影ではなく、静御前の意思で出て来たんじゃないか。だから神様である木花姫なんかには見えていても、義経には見えてない、のかな?存在は感じていたかも知れないけど。
弾正と向き合う木花・静ペアを助けに来た場面はあるけど、あの時も静の方を全く見てない。ただ弾正を追って来たら木花姫が対峙していて、木花さんを助けるために敵との間に割って入った、という風に見える。
そう言えばここでTAOのリズムが変わるのがまた格好良いんだな〜。

まあとりあえずこの時の義経様は、静御前どころか弾正さん以外は目に入ってないっぽいけど。それくらい弾正から目を離さない。弾正さんも常に義経だけを見てる。
や〜〜〜格好良かった〜〜〜。

最後の決戦はみんな格好良かった!悪役も善役もみんなみんなみんな。
ただ、岩長姫だけは…うん、切ない。

でもエンドロール(?)で元気な姿が見られたから良かったよ!
市川笑也さん、氷艶・破沙羅を見るまで存じ上げませんでしたが大好きになりました。

あ〜やっぱりまた観たいよ〜〜〜再演して〜〜〜〜!!!!

氷艶 hyoen2017 破沙羅 再放送祈願

※主にNHKさんの方を向いて書いています。

前略 NHK再放送ご担当者さま

まずは単刀直入にお願い申し上げます。

何卒!氷艶 hyoen2017 破沙羅 の再放送を、どうぞどうぞ実現していただきたく、心よりお願いいたします!

フィギュアスケート歌舞伎という前代未聞のコラボレーションになった氷艶・破沙羅。
最終日の公演を観ましたが、観る前から最大限に期待していた自分の期待を更に上回る、驚かされっぱなしの大興奮なエンターテイメントでした。
これを高画質カメラと素晴らしいカメラワークで映像に残して下さったNHK様に心から感謝します。
見逃して残念がっていた友人にも、まだ見た事がないたくさんの人にも、是非もっとたくさんの方に見てもらいたい。自分もまた見たい!

NHK様におかれましては、既にたくさんの氷艶ファンから熱いリクエストが届いているとは思いますが、この片隅からも届くか届かないかは別として、とにかくどんなに自分が氷艶2017・破沙羅が好きでBSの放送が素晴らしかったと思っているかを勝手ながらプレゼン致します。
想いが強過ぎて長くなるかも知れませんが、出来るだけ簡潔にまとめるように気をつけます。最後までお読み頂ければ幸いです。(届きますように!)

コラボとしての格好良さ

フィギュアスケート×歌舞伎。
どちらもを追求し観客を楽しませるものという共通点はある。だけど構想を初めて聞いた時は、まさかここまでのコラボが可能とは思ってなかった。共通項はあっても世界が違い過ぎるのではと勝手に思ってた。
浅はかな先入観でした。

実際に話が動き出し、殺陣の練習など情報が入ってくるに連れてどんどん期待が膨らんでいき、更に振付に東京ゲゲゲイが関わっているという情報が入った所で一気に自分の期待値が上昇。そして初演後に溢れかえった観た人達からの大興奮のレポートの嵐!期待は最高潮に!

その状態で最終公演を観て、自分の持っていた常識の狭さと、鮮やかにそれを飛び越える演出の市川染五郎さん(現・松本幸四郎※この後は染五郎氏で通します)の力に度肝を抜かれました。

まず素晴らしかったのが演者が皆スケートリンクという同じ場所に居た事。
リンクの上はスケート靴が必須と思っていたけど、特注のスパイクならスケートをしない人もこんなに自由に(見える程)動き回れるとは。

広いリンクの上で、歌舞伎役者達が足を踏み鳴らし、アクション俳優が空を切り、その間をスピードスケーター達がすごい速さで縦横無尽に駆け巡る。

フィギュアスケーターの滑りは、地に足の付いた役者達とは対照的で、軽やかな優雅さがより際立って見えたし、終始スケート靴を履いていた市川笑也氏も、スケートの滑らかさでこの世のものとは思えない人外感と威圧感が出てた。

和太鼓のDRUM TAOもリンクの上で、時に身軽に配置を変えながらのパフォーマンス。背景の音楽としてではなく演技に参加しているのが良い。ストーリーの重要な役所としての在り方が本当に格好良かった。素晴らしい躍動感!

最後の決戦、刀をぶつけ合っての殺陣は、スケートのスピードと刀捌きが合わさって、とにかく格好良い。皆カッコイイけど、特に主人公の仁木弾正(市川染五郎) vs 源義経(高橋大輔)の一騎打ちには大興奮で血が湧き踊る!

どっしり構える染五郎氏に対して、飛び回り跳ね回り、あらゆる角度から切り込んでいく高橋さんがまさに神出鬼没な源義経。本気の真剣勝負な殺気を感じてゾクゾクした。
歌舞伎にもフィギュアスケートにも興味がなくても、チャンバラ時代劇が好きな人ならたまらないと思う。現に我が家の父がそう。

と言うか、ブレードがきらめくスケート靴で、氷を蹴散らしながら跳躍し、刀を持って歌舞伎役者とスケーターが本気の殺陣なんて!ときめきしかない!
その上DRUM TAOの和太鼓掛け声が殺陣の動きに合わせて鳴り響くんです。生で!ピッタリと!どんな贅沢!

更に。その舞台を、チームラボの精密に計算されたプロジェクションマッピングが、演者達の動きにビッタリ合わせて鮮やかに彩っていて、豪華極まりない。

様々な分野の一流の演者達が同じ氷の上で全開の演技を見せてくる、その迫力

公演千穐楽で演出・主演の市川染五郎さんが言った、皆さんは歴史の生き証人です!という言葉、本当に本当にその通りだと思った。
あの時のとにかくとんでもないものを見た!という興奮は1年以上経った今も鮮明に甦る、忘れられない記憶です。

自分がフィギュアスケートのファンなので、そちら側の感想を多く目にする機会がありますが、たくさんのスケートファンがその後、歌舞伎に足を運んでいます。完全にリピーターになっている方もお見かけします。

史上初のコラボの試みだった訳ですが、素晴らしい完成度と化学反応で、歌舞伎の良さを今までそれを知らなかった層に広めたと思う。見事な宣伝素材です!

歌舞伎初心者が感じた歌舞伎の美

歌舞伎をそれまで一度も観た事ない、日本の伝統芸能なのにそれに対してほとんど知識のない、日本人としてやや残念な自分が、一発KOで歌舞伎の魅力ってスゴイ!と思ったこの公演。

何と言っても歌舞伎役者さん達のが魅力的。
歌舞伎の声にこんな魔力みたいな力があるなんて全然知らなかった。普通に地声が良いとかそんなものじゃなくて、鍛えられ積み上げられた伝統の力を、声から感じた。
ただ台詞を喋っているというのではない、詩吟のような謡のような朗々とした声がこちらの体の芯まで届く。
リズムのある声の響きに、一気に気持ちを引きつけられる。その抑揚がとても心地好い。

市川染五郎氏の艶やかなカリスマの声はさすがの貫禄で、姿を見ずに声だけ聞いていても酔わされるし、女形市川笑也氏の妖艶なこの世のものとは思えない声音は、それだけで既に神様。

声ってこんなにも役に説得力を持たせるんだと思った。どんな突拍子のない設定でも、その声を聞けば納得してしまうような。

歌舞伎の動きの格好良さ、踊りの緩急、間の絶妙さにも魅せられた。

特に動きの間。足をダンっと踏み下ろし見得を切るのも素晴らしく気持ち良いけど、それも絶妙の間があるからこそなんだと思った。キメの動きと動きのつなぎに入る、このバランスが気持ち良い。トメル動作も印象的。

特に宴の席の場面、歌舞伎方4人が揃って舞を披露する所は惚れ惚れしました!

染五郎さんの宙返り宙乗りでの回転や笑也さんの毛振りまで見せてもらえて歌舞伎の魅力が盛り沢山。

フィギュアスケーターの演技力

フィギュアスケートは、スポーツの中でも演技力も表現の一つとして取り入れられる競技だけど、台詞がないとは言え、というかだからこそ、スケーター達もここまで身体だけで演技が出来るのかと驚きました。

高橋大輔さんは、主人公の一人として出番も多かったし、自分がそもそもファンなので現れればほぼロックオンで観てしまうんですが、とにかくずっと源義経として存在してる。一瞬たりとも素にならない。どんな時も義経だった。

そして長唄でのあの舞。スゴイ。
敵方の仁木弾正を虜にしてしまうという筋書きが、あまりにも当然と思うような圧巻の踊りの説得力だった。
しかも、変装して女性として舞うという設定の中、きっちり義経として女装しているという演技力。仮面を付けた時、仮面を取る時、そこでガラッと雰囲気を変えられるのはさすが!

村上佳菜子さんの演技も素敵だった。
夫の猿田彦の周りを飛び跳ねるように踊る愛らしさたるや。夫を心から慕い大好きだという気持ちがあふれていて、この夫婦の相思相愛っぷりには笑顔にならずにはいられない。
弁慶となった猿田彦が往生した時の悲しみの舞には胸が締めつけられた。純粋な悲しみがひしひしと伝わって来た。

荒川静香さんの一人二役も、役の振り切れ方が見事!
敵役側になる二役目の蛇髪姫の時には、芝居冒頭の女神役の時の優雅さはどこにもない。
有り余る程の圧倒的な力で弱い人間を弄ぶのが、ホントに楽しそうで。
それがどこか無邪気な雰囲気で、ご主人様に褒められたがっているやんちゃな子どもの様でもあり。
フィギュアスケートを見ていて荒川さんに女神がハマるのは分かっていたけど、こんな方面の演技が出来るとは新鮮な驚きだった。すごく良かった!

織田信成さんの瓊瓊杵命のやんごとなき感もよくはまっていた。普段はコミカルで人当たりの良いイメージがある人だけど、凛々しくて厳かないかにも高貴な神をしっかり演じてる。

木花咲耶姫浅田舞さんは、軽やかな動きがまさしく花のような美しさと可憐さで、瓊瓊杵命が一目で恋に落ちるのも納得の魅力。自然と目が惹き付けられる華やかさ

静御前を演じた鈴木明子さんは、義経の中の幻影として登場し、義経の心の中だけの儚い癒しなのかと思ったら、少しずつとした強い女性としての実体のような力強さを感じさせていく、その変化が印象的だった。

女性陣がか弱く守られるものとしてでなく、優美な癒しとしてだけでなく、自ら戦って大切なものを守ろうとする強さが前面に出ているところも、この破沙羅の魅力の一つだ。

舞台としてのスケートリンクの魅力

プロジェクションマッピングの投影対象として

真っ白な広いスケートリンクにチームラボのプロジェクションマッピングが艶やかに映える。考えてみたらスケートリンクって絶好の投影対象なんじゃないか。

岩長姫が弾正を呼び出す妖し気な呪術のシーンは、黒いシルエットのスケーターがスピードにのってグルグルと周り、その動きの中で映像の草花が姿を変えていくのがゾワっとするほど不気味だった。おどろおどろしさ満点。

一転して義経召還の場面では、華やかで清浄な空気を醸し出す。
吉野の千本桜が舞台と思われるリンクに広がった一面の桜の中を、切り裂くように一羽の鷹がよぎり、満開の桜がぶわっと飛び散ったそのの中から義経が現れる。鷹の速さ、スクリーンに一気に舞い散る花、風を切って現れる義経、そのタイミングが鮮やか!!!

最後の決戦直前のDRUM TAOの演奏がメインになるパートも素晴らしかった。
噴火するマグマ、嵐、大海原。
和太鼓の激しい音からマグマが噴出するみたい。直接こちらの腹に響く振動としての太鼓の音と、音を可視化したような映像との迫力でどんどんが高まっていった!目から、耳から、肌から、一遍に音が入ってくる気持ちの良さが何とも言えない高揚感を生んでワクワクする。

芝居の舞台として

歌舞伎に限らず通常の演劇は、正面の限られたスペースを一方向から見る形のものが多い。対してスケートリンクは広大なスペースで、ほぼ360度、舞台をぐるっと囲むようにして客席があり、ほとんどの客は上から見下ろす形になる。

この形と広さがプロジェクションマッピングにも活きるし、演技もほぼ全方向に向けて見せる事になるのが面白い。(破沙羅では客席の4分の1くらいを潰して舞台裏にしていたけど、普通の舞台に比べれば断然広い。)

一つ一つの芝居が大きくなるし、スケーターの移動の疾走感もあって、とにかく視覚からの勢いがスゴかった。ストーリーの躍動と合わさってエネルギーに溢れてた。

和太鼓の迫力と芝居との融合

DRUM TAOの魅力はチームラボの映像とのコラボだけでなく、前半最後の蛇髪姫と大蛇のシーンなど、スケートとのコラボレーションも圧巻でした。

メンバーが演奏しながらリンクに躍り出てきて、悪方の軍勢として参加している。スケーター達が操る大蛇の不気味さや荒川静香さんの躍動感あるスケートの背後で、太鼓を叩きながらTAOのメンバーが跳ね回るのがすごい迫力。

皆さんキビキビしてて格好良いけど、中に女性もいらっしゃって、これがまた忍者のくのいちみたいで格好良い。
このTAOの躍動感もあの場面の圧倒的な力を感じさせる大きな要因だった。和太鼓の音とフィギュアスケートもビックリするくらい合う!

4K映像の素晴らしさ

全体的に暗い照明だったリンクを4Kならではの高画質で見事に細部まで捉えてくれていた。
仄暗い幽玄の世界はそのままに、演者達のちょっとした表情までしっかり映されていて、あの時の記憶が甦ると同時に、天井席からでは見えなかった細部が分かり新しい感動も貰いました。

そして、何と言ってもカメラワークの素晴らしさ。
アップと引きが絶妙なバランス。

あの広いリンクの舞台で、一度にたくさんの事が起きているので、これをどうやったら画面に納められるんだろうと思ってました。素人目にはかなり難しそうだと感じてましたが、さすがプロの仕事。
期待を遥かに超える完成度で、痒い所に手の届く素晴らしい編集映像でした!

NHKならではの4Kカメラとこだわり抜いたのだろう映像技術。

この技術があってこそ、あの時の興奮が鮮やかに保存されたと思います。あの時の空気が映像として残っているのが本当に嬉しい。

日本の技の結集

氷艶って、単純に歌舞伎×フィギュアスケートアイスショーというだけでなく、とてつもなく面白いエンターテイメントで、それが、日本の各分野の誇らしい程の技術の集結によるものなんですね。
各分野のプロ中のプロが、限界に挑んで見せてくれた、前例のない史上初の、めちゃめちゃ楽しい一大プロジェクトでした。

あまりにも心躍るショーだったので、自分が楽しんだだけではもったいないと思うんです。すごく自分に響いたものを観た時、色んな人に紹介したくなってしまう。

大抵は自分が楽しんでいれば、趣味は人それぞれだし、そこで満足してるんですが、ここまで爽快に驚かされてしまうと、この喜びを誰かに伝えたくて仕方がない。出来るだけ多くの人と分かち合いたい。いえ、分かち合えなくても良いけど、分かち合えるチャンスを多くしたい。

だってこの世紀の公演が、素晴らしい映像技術で保存されているんですから。
皆に知られないともったいない!
氷艶・破沙羅半端ないって!


あの…大変差し出がましい事ですが、NHKさんのEテレでは古典芸能への招待という番組がありましたよね。
あの、いかがでしょう。あれにピッタリな素材じゃないですか?

古典かと問われれば、…ちょっとアレだけど、常に新しく「かぶく」力は古くから伝わる日本の伝統芸能のはず!
素晴らしいこの日本文化を、今まで興味はあっても見てこなかった(自分のような)新規層に紹介するには、この氷艶、打ってつけのコンテンツではないでしょうか。

もちろん、古典芸能という枠に囚われず、日本の一流技術の結晶という事で、総合テレビでの放送でも!日本独自の芸能・スポーツ・アートの結集!
4K技術による番組としても格好の宣伝になるでしょうし、なんならNHKスペシャルでやって頂いても良いのではーーーー!!!

出演しているフィギュアスケーターも、オリンピックメダリストなどスター揃い。彼らが演技をするというだけでも興味を持つ人は多いはず。
その上、今をときめく松本幸四郎氏の染五郎時代最後の演出大作!歌舞伎のファンでもスケーターに興味を持つ良いチャンスですし。

いかがでしょうか?
是非是非再放送お願いいたしたく!!!あの、出来れば地上波で…。もちろんBSプレミアムでも再放送があれば素敵な事に変わりないですけど。
まずはどうぞ再放送の程よろしくお願いいたします!!!


ちっとも簡潔じゃなくてすみません。出来うる限り削ったつもりでのこの長さ…
でも、もしももしもお時間もう少しあったら、過去のエントリーにある氷艶への思いの丈も読んで頂ければ幸いです。そっちはそこまで長くないです。

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