はてはてマーチ

「高橋大輔」を好きなだけ語るブログ

氷艶月光かりの如く 物語と舞台の力

氷艶2019「月光かりの如く」は、2019年7月26日〜28日の3日間。1年前のこの時期だったんだ。
あれがたった一年前とは思えない程、世界が変わったような1年だった。
この1年、特にこの半年、人の生死について考える事がすごく増えて、そのなかで自分の中の月光かり〜の意味も、ちょっとずつ変わった、ような気がする。

自分は楽日に2回観賞出来て、公演としての氷艶には大興奮でした。
舞台としての完成度や、歌の美しさ、スケートの楽しさ、それぞれの表現の幅の広さ、諸々期待以上の盛り沢山で、何より主役の高橋大輔さんのスケートの力の奥深さに、天に昇るくらいシビれました。

でも
実はあの物語の終わり方を受け入れるのは、自分はちょっと時間がかかったなと、最近になってまた思い出してる。
煌びやかな世界にワクワクして夢中になった気持ちと、最後のどんでん返しに打ちのめされる気持ちが交互にやってきて、演出の宮本亜門さんの意図が掴めなくて、何度も記憶を反芻してた。

楽しくて華やかで躍動的で、嬉しい驚きだらけの素晴らしい体験だったけど、最後の特大の驚きに、観終わった直後はずーーんと苦しくもなってた。

その気持ちをまた生々しく思い返したのは、1周年って事より、つい最近、二年前に亡くなったデニス・テン選手の演技と、今年亡くなった三浦春馬さんの新曲のMVを、動画で観たからだと思う。

あの時、月光かりの展開が受け入れ難かったのは、多分、時期的なものもあったかも知れない。
7月下旬のその時期は、デニス・テン選手の一周忌の直後だった。
主演の高橋選手は、ショーの練習の僅かな合間に、弾丸でカザフスタンを訪れてお参りされていた。
しかも昨年のその頃は、京都アニメーションでの事件があった。
まだまだこれからずっと輝くと信じていた命が、人の手で突然奪われてしまった辛い出来事が重なっていく。恐怖とか怒りとか無力感とか、苦しくて、すごく情緒不安定だった。

だからなのか、市井の人々が苦しむ場面がすごく辛くて、それに加えての衝撃のラスト。
世界は理不尽だ。自分はそう思う。
そして亜門さんは、理不尽を理不尽なまま描いていたと思う。
虚構が現実を抉り出すというか。そのリアルさに、その時自分は全然対応できなかった。

でも多分、そこがすんなり受け取れない程辛かったからこそ、生きるってなんだろうって、その後もずっと考え続けたんだな。
理不尽だ。辛い。こんなのない。って思いながら、何度も何度も考えた。

源氏物語に流れていた死生観、無常観。
深くて重くて苦しくて、でもやっぱり、生命の美しさが響き渡るみたいに伝わってきてた。
亞門さんは、人の世の辛さや悲しさを妥協なく描きながら、やっぱり何より人生の重みや美しさを伝えてたんだろうな。今はそう思う。

最後が悲しいとそこに気持ちを全部持ってかれそうになってしまうけど、違う。
最後の最後まで、燃えるように美しかった。
特に最後の光源氏の慟哭の舞は、感情が全部嵐の中に入っちゃったような激しさで、それでいて透き通るように純粋なスケートだった。光源氏の生命の煌めきそのもの、みたいだった。
みんなあんなに輝いて美しい時間があって、それを見せてくれてた。
あの人もあの人もあの人も。

テン君の2017年の時の演技動画を観て、なんて瑞々しいんだろうって思った。
三浦春馬さんの訃報直後に公開されたMVを観て、なんて輝いてる人なんだろうって思った。

大事なのは、語り継ぎたいのは、思い出したいのは、どんな風に生きたか。
そんな風に書いている文章を、三浦さんの訃報の後で読んだ。本当にそうだ。

氷艶の、後に残された藤壺や頭の中将たちの事を思う。

”Every person has a heart and that makes them special.”(その人が特別になるのは、その人の心があるから。)
テン君が言ったと紹介されていた言葉を、何度も思い出す。
光源氏の心。テン君の心。色んな人の心。

今もまだ、ぐるぐると考えてる。自分の解釈はまた変わるかも知れない。
舞台って2時間ちょっとの上演時間だけじゃない。すごくすごく大きな時間。

お芝居の世界と現実の世界が、全然違うはずなのに同じ線上にある。
公演が終わってだいぶ経っても、ふっとあの時の断片が頭の中に甦ったりする。
現実の世界で何かある度に、お芝居の解釈まで深まったり変わったりする。
かつては辛くて仕方がなかった部分に、今になって救われたりする。
分からないでいた意味が、急にわかった(ような気がした)りする。

演劇ってすごいな。
何度でも、新鮮な発見や感動がある。
舞台って、本当にすごい。

どんな風に生きたかが命の輝きなように、舞台とかの文化は人生の輝きなのかな。
テンくんの言葉の "heart"(心)でもあるかも。
心があるからスペシャル。

というわけで。
私の人生を深める為に何度でも繰り返し観たい。ので、

是非、円盤(DVD、BD)を!

氷艶の円盤を出してください!

お願いしますーーーーー
(氷艶・破沙羅の方も待ってますー)

これからも、スポーツ、エンタメ、芸術、食、などなど、様々な文化がどんどん栄えて花開きますように。そんな世界でありますように。

追:
1周年に合わせてあったらしい、ひょうえんず(氷艶出演関係者)リモート同窓会の楽しいお裾分けを、SNSでいくつか拝見しました。
文化を作り出すことを生業にしている方々。公演の中止が相次いで、今までの日常とは違う中でも、踏ん張りながら過ごしているんだろうな。
深い絆と楽しそうな様子を垣間見せて貰えて、すごく嬉しい!