はてはてマーチ

「高橋大輔」を好きなだけ語るブログ

高橋大輔 沼への道 step10 ブルース

2011−12年フリープログラム
"Blues for Klook" by Eddy Louiss

ブラボーーーー!!!!

高橋選手がこの曲で滑らなければ、この曲を聴こうと思う事は自分は一生なかったかも知れない。
気怠い、単調、スローテンポ。
耳につくエレキギター*1
自分にとっては好きなタイプの曲では全然ない。
でも。良い!!!

自分のセンスの範疇にない曲が素敵な曲に聴こえた、というレベルじゃなく。
これ最高!この曲じゃなきゃ!!!と思わされるレベル。
その音楽の良さに気づいて惚れ惚れしてしまうレベルなのです。
作曲したエディ・ルイスという人に感謝せずにはいられない。
ブルース・フォー・クルック、サイコーです!!!

好きなのは2011年グランプリファイナル。あと、2012年国別対抗戦のフリー。でもやっぱり世界選手権のも素晴らしかった!
どれも甲乙つけがたいけど、力の抜け具合の絶妙さで、GPFが自分は特に好き。

2011年 ISUグランプリファイナル
(プログラム感想)

始まりはなんと、リズムがない。
エレキギター(訂正:電子オルガン*2)のビョーンとした音でゆったり始まって、気怠く伸びたり、時々切り裂くような音が入ったりしながら主にギターの音1本で進むんだけど…

これがまたえらくスローで、それがかえって緊張感を煽ってくる。
どこで次の音が入るのか予測出来ない。
もちろん高橋選手は、その不規則でちょっと不穏な音に、ピタっと合わせて動いてくる。慌てる事なく余裕を見せながら、気怠く色っぽく、でも引き締まった空気。カッコイイ…!

徐にゆっくりとドラムとベースがテンポを刻み出して、段々とこの空気が変わっていく。
この微妙な変化を劇的に見せるのが、高橋大輔
そう。この人のその特異能力はもう知ってるけど、見る度にやっぱり驚かされる。

首の動き、手首の返し、足の運び。
全身で音の雰囲気を醸し出しながら、動きの多彩さで音の表情を増幅させていく感じ。音楽の中にあるドラマを更に大きくして見せてくる。

全体的に感じる飄々とした大人の余裕、ブルースの余裕が、たまりません!!!
ジャンプも次々に決まって、グングン引き込まれてく。
ヒョイって飛ぶんだ、ジャンプを。
音楽の中のアクセントとして、ヒョイって軽々と。

細やかに動く上体の動きがすごく粋で格好良いから、自分はまずそっちに目を奪われがちなんだけど、足だけ見てても気持ち良い。
足の動きからもブルースが聴こえてくる。
本当に身体中の全ての部位で音楽を表してくる。

ドラム、ベース、メロディー、それぞれの音のニュアンスを細かく細かく拾いながら、自在な緩急をつけて動いていくその動きに、気持ち良〜く酔わされて体温が上がる。自分のボルテージがどんどん上がっていくのが分かる!

単調な部類の曲だと思うのに、初めの緊張感からだんだん軽妙な余裕になって、最後は熱狂へと変わっていく、この過程がもう、もう、もうスゴイ!(語彙放棄)

あの、
この言葉は出来るだけ言わないようにしてたんだけど。
これまでの想像を絶するような努力や、数々の工夫や必死のトレーニングの過程を、自分が見過ごしてしまい兼ねない気がして、一応あまり使わないように気をつけてたんだけど、こんなものを見せられたらもうダメです。我慢の限界…。
言いたい。言ってしまうぞ。

高橋くんって、高橋大輔って…

天才?!!

天才でしょ???

だって!

あのブルースの内に潜む燻るような熱情を、内に籠るような熱さを、あんなに無理なく自然に引っ張り出して見せるんだ!
状態は変える事なく、ただ鮮やかにして観客に伝えて見せる。って!!!!!

なんなの?誰なの?音の神様なの?神の遣いなの?


多分高橋くんは音楽に共感して、その気持ちのままに動く。
感情のままに操れる身体は努力の賜物としても、音への共感力はやっぱりやっぱり天才的だと思う。

もしかすると、高橋くんにしてみればただ音から感じた通り動いただけ、なのかも知れないけど、見てるこっちはその動きから出る表現に取り込まれて呆然とする。

一気にグワっと盛り上がるのとは違って、徐々に徐々に興奮が高まって、それが段々大きくなって、仕舞には抑えきれない爆発になっていく。
静かに熱情が高まっていつの間にやら熱狂の渦
何度経験しても楽しい!
病みつきです!

2012年世界フィギュアスケート国別対抗戦

世界選手権に続いて4回転ジャンプが決まった演技。

2月の四大陸の試合後に採点傾向に合わせるために振付を変え、つなぎの要素が増えた(はず!)。でも実は、その分余韻の部分が犠牲になったようにも感じてた。
あの余白をこそ愛してたのか…なんて、失って初めて気づくものなんですね。

でも国別戦では、変えた振付はそのままなのに、以前のような余裕が増えた感じがした。大好きなあの、絶妙な脱力感!

後から聞いた話では、この時ご本人もゾーンに入っていたとか。
観ている方でも失敗する気配を全く感じない、ただブルースの雰囲気に酔いしれるだけ酔いしれられる、試合というよりはエキシビションのような、というかライブ会場のような、これなんのフェスティバル?みたいな。

とにかくなんか爆発してた。
日本の満員の会場が一体になってウオーーーーってなった!!!

凄まじい程の集中力なのに、ところどころでニヤッと笑う。観客を煽る。

余裕っ!

国別対抗は普通の試合とは違って、国毎に応援席があり選手達もそこから自由に応援してるんだけど、この時は日本の選手達だけではなく、応援席にいた他の国の選手達も総立ちになって大盛り上り。

高橋くんがこの日の最終滑走者だった事もあって、得点待ちの時間では、キスアンドクライの真上にあっちこっちの選手達が集まって来て、フェンスをポンポン叩いたり足を踏み鳴らしたり、応援グッズのクラッカーを打ち鳴らしたり、とにかく大興奮の賞賛の嵐。今こそ良い点を出せ!と言わんばかりに手拍子で得点を催促してた。
高橋くんも照れくさそうだったけど嬉しそうだったな。それを見てこちらも幸せに。

良い演技は国境を越えて誉め称える、それが自然発生で起きたすごく美しくて素敵な瞬間を見せてもらいました!フィギュアスケートってやっぱりいいな。

余談

高橋選手を誉め称えるキスクラ上の集団の中に、ニコライ・モロゾフ氏が交じってたんですね。端っこの方だけど自分の席から立ち上がってキスクラの方に寄って来て高橋くんの得点を待つ集団に加わってる。

ほ…微笑ましいじゃないか。ニコライさん。
突然の師弟の決別から3年半。
その間なんだかんだと物言いた気な風情もあったけど。

そしてここから2ヶ月後にまさかの再タッグのニュースが入ってきた。エイプリルフールのネタにさえ使われる程、ファンの間ではあり得ないと思われていた再結成。
実はこの国別の時には既に、高橋選手にコーチ復任の打診をしていたと後から知ってなんだかもう笑ってしまった。

再結成は再結成でその当時は大丈夫かなあと不安もあったけど、なんだかんだで引退後の今も仲の良い師弟関係になって、よかったよかった😀


2011年GPF

2011-12 GPF Daisuke TAKAHASHI FS (CBC HD) - YouTube

2012年国別

Daisuke Takahashi 2012 WTT FS - Video Dailymotion

2012年世界選手権

Mar 2012 Daisuke Takahashi 高橋大輔 FS - YouTube

*1:追記2019/11/20:エレキギターと思い込んでましたが電子オルガンだという情報が。情報元はこちらの記事

*2:※1と同じ記事参照

高橋大輔 沼への道 step9 Vas

2011-12年ショートプログラム
"In The Garden of Souls" by Vas

デイビット・ウィルソン氏からの初の振付、曲は音楽グループ ”Vas” のアルバム ”In The Garden of Souls” から。

お見事デイビット・ウィルソン、お見事ダイスケ!と言ったのはアメリCBCの解説者だったか。
またもやとんでもない振付が来ました。しかも競技用プログラム!

あの…振付師さん達、何かがエスカレートしてませんか???
まさか彼らの間で、ダイスケでどれだけ禁断の扉を開けられるか選手権が開催されている訳じゃ…ないですよね、まさかね。はははー笑

黒豹

私の中では、人だけど人じゃないシリーズその2(その1はバチェラレット)。
高橋選手はクラッシックをやらせても人じゃなくなるけど、あれは音楽になりきる感じで健全な気配がするのでこのシリーズには入らないかな。あ、つまりこっちを健全じゃないと思ってるのか…。

決して悪い意味ではなく。むしろ良い。すごくいい。たまらない!
惹き込まれて見蕩れてしまってものすごく心地良いのに、ちょっと落ち着かない。安全安心とは言い難いこの感じが、イイ!

特にこのプロの高橋選手の動きは猫科の動物を思わせる。黒豹に例える人が多いみたいだけど大賛成です。格好良くて美しくて、でも側に寄ったら圧倒的な力で襲われてひとたまりもないだろう感じ。
フレンドリーさはカケラもないけど、ちょいちょいこっちを誘惑してくる。
どうしろって言うんだ!!!うっかり手を出したら絶対シャーって牙を向けてくるくせに!!!(すみません、妄想の世界にまた…)


体の線に沿った衣装が余計に動物感を出してるんだけど、特に猫科っぽいのは、動き方のしなやかさはもちろん、動きの先の先まで神経が届いているから。特にシッポ。あ、高橋くんにシッポはないか。

猫って関節の数どんだけあるのかってくらい、どこもかしこも身体の端までちょっとずつ曲がる感じで、しかも一定方向じゃなくて曲線で行ったり来たりしますよね。
シッポ部分なんかはそれが特に顕著で、ずっとシッポだけ見てても楽しめるくらい、先の先まで神経が行っていて微妙な角度でヒョイヒョイと動く。そしてなんでヒョイヒョイ動いているのかは完全に謎な事が多い。
その一瞬一瞬の曲線がたまらなくて、自分にとっての猫最大の外見の魅力はそこかもと思う。

突然に猫様の魅力を語る人になってしまったけど、自分が今しているのは高橋大輔くんの話です。
つまり、しなやかで自由で遊びがあって、そして神経が先の端まで行き届いてる。VASの高橋大輔は正にあの感じ。シッポもついてるんじゃないかな。そうじゃなきゃあんなバランス取れないと思う。(本気)

後、ほんのちょっとの蹴りでグインって移動して、そのスピードが普通じゃなく速くてビックリするのに、すごく自然で。こんな事は当然の動き、みたいな雰囲気でやるの、そうゆうとこもネコ科っぽい。
それに加えて人を寄せ付けないオーラと強靭そうなのに細身のしなやかな曲線。ネコ科の中でものイメージが一番しっくりくる。

最初の足をパンっと軽く踏む下ろすような仕草がシャープで柔らかくて、獲物を狙うような、俊敏で足音を立てない動きにまずゾクッとくる。
ぐるんっと身体をひねって見せる動作が細い腰を際出たせて、均整の取れた曲線のラインがすごく綺麗。しなやかで力強くてそして美しい!野生動物の美しさ!ってこんな感じのフレーズ前にもどっかのプログラム感想で書いたな。…ああ、やっぱりバチェラレットだ。

このプログラムでの高橋くんの動きの美しさや色気は、男性的でもなくもちろん女性的でもなく中性的でもない。あえて言うなら動物的。でも結局は高橋大輔と言うしかない。この人ホントなんなのですか???

スピンの艶やかさ

スピンがまた美しい。
特にNHK杯での速さとキレは素晴らしかった!

スピン中に入るドラムのアクセントにバッと手を突き出して姿勢を変えるところとか、突然過ぎて仰け反りそうになったんだけど、めちゃめちゃ音の鋭さに合っていて気持ち良かった。

このシーズンからすごくスピンの姿勢が安定したと思う。このプログラムのスピンでは、祈りのような、神への捧げ物のような…、曲中の原始的な太鼓の音とゾワッとするほど透き通った歌声と相まって、そうゆう神聖さを感じる。自分はシャーマン(巫師)のイメージも思い浮かぶんだけど多分このスピンの影響が大きい。

神聖と言っても、あの真っ黒な衣装と演技者が出すちょっと尖った妖し気な艶のためか、黒魔術の世界の方が近いかな…。あの澄み切った女性の歌声も、ここでは美声で船人を惑わす海の怪物セイレーンのようにも聴こえてくる。

真っ白なリンクに黒尽くめの高橋くんの動きがシルエットで鮮やかに映える。
特に最後のスピンはこう…、何かが空に登って行くような感じ。もう魂が異次元に連れてかれそうな勢いで美しい。

音への反応 特に太鼓!

あと!あと!何と言ってもたまらないのがドラムの音への反応!ドラムというより太鼓と言いたい。遥か昔から鳴り響く原始の響き。

低く重く響くその振動に連動するように、胸からお腹にかけての身体の芯の部分まで使ってドンっと動く。あの太鼓特有の音の振動が波動として可視化されてるようで見ててすごく気持ち良い。
肩から手の先とかなら分かる。それだってドラムの音のように動くのは難しいけど。ここではそれに頭の先から腰にかけての動きも加わる。足先まで一つの動きになってるから全身と言っても良いんだけど、特に胴の部分が印象的。

この身体の芯の部分で振動を起こされると、TV越しの自分の腹にも音がドシンっと響いてくるような気がしてハッとする。
しかも振動って波ですよね!一音じゃなくて!波だから!あれが身体の動きになってるの!スゴイ!!!

他にも、このドラムにピタッと合わせてバタフライで空中に跳ねるとこ、あれもたまらなく好き。
音に合わせて手や足をバンっと止めたり動かしたりするのはよくあるんだけど、ドラムの鳴る音の長さに合わせて跳ねるって!これ、滞空時間も合わせてる訳で!
しかも、ドラムの音の鳴り始めの瞬間に合わせるだけじゃなくて、残響で響く音の波と、跳ねる体の高さの波が同じじゃないですか???波の高さが。そんな事コントロールできるものなのですか?ダンサーなの?あ、ダンサーだった。いやもう、ダンサーってスゴイわー。(この時はまだダンスやってません)

ジャンプも音にはめてくる。ただ技術の要素としてではなく、プログラムを表現するための振付として必要不可欠な動きとして飛んでくる。

シャープなトリプルアクセルをスパンっと決めた後すぐに、素早く飛び跳ねるように踊る。踊りながら入っていくクールなルッツジャンプは、着氷後すぐさま逆向きに跳び上がって滑って行く。どっちの振付もジャンプがあってこそで、大好きだ

ステップはもう…もう…、何て言えば良いのか。気持ち良過ぎて呆然としてしまう。
伸縮自在で動き回るめまぐるしいステップ。
身体を折り畳んでグッと縮んだと思ったらビョンッと勢いよく伸びる。そっちに行くの?という意表をつく足の運びをしながら、細かく細かく音を拾って進んで行く。

動きとしては驚きの連続で、でもただただ美しくて、こっちは口開けてほわぁってなって観てるだけ。好き過ぎて語彙がなくなる。魂が抜かれるってこんな感じだ。でもこれでなら本望ですとも!

安定して好成績だったシーズン

何と言ってもNHK杯の完成度と動きのキレが素晴らしいけど、ショートプログラムとして怪我後初めて入った「4回転3回転」のコンビネーションジャンプを決めた全日本選手権も良かった。
世界選手権も4回転を決めて(次につけたセカンドジャンプが惜しかったけど)、全体の動きは良かった。当時のショート世界最高得点を更新した国別対抗戦も良い(ただ、自分の大好きな単独ルッツの後の振付がコンビネーションに変わった為に無い…)。

シーズンを通してだいたい安定していつも素晴らしいプログラムだった。フリーのブルースと合わせて、気力も技術も身体もとても充実して見えたシーズン。

高橋くんの纏う雰囲気も前シーズンのどことなく憂いのある艶ではなく、気力のみなぎった強い目をしていて、勢いのある力強い美しさだった。心の状態が真っ直ぐ顔に出るタイプなんだなあ。肝心な所で自分というものを誤摩化したり隠したりしないからかな。

前のシーズンの世界選手権フリーで沼に落ちた直後のシーズンがこれだったから、もう沼道一直線。ズブズブと喜び勇んでハマっていきました。幸せなシーズンだったなあ。


数々の名演技。でもやっぱりNHK杯
という訳で2011NHKのショート


DT "In The Garden of Souls"