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「高橋大輔」を好きなだけ語るブログ

氷艶2019「月光かりの如く」楽日の感想 2

前回に引き続き、氷艶楽日の感想。
今回は主に高橋くん以外の方々についてと、物語の感想。

※ネタバレと妄想があります

そもそも自分は高橋大輔さんのファンでして、彼の今回見せた多才な表現の幅には、心臓が壊れかけたんですが、他のキャストの皆さんからも驚かされっぱなしでした。

スケーターな福士さんと波岡さん

まず福士誠治さん!!!

ホントに何者なんですか?スーパーマン???
悪役側の長道を演じる波岡さんと共に、ほぼ出ずっぱりで氷艶を動かしたキーパーソン。
台詞の緩急も歌声の凛々しさも、そしてスケートが驚愕的に上手い!
細かい技が入ってて、高橋くんの光源氏との掛け合いが、台詞と同じようにスケートも軽妙で、上手すぎてうっかり見逃しそうなくらい上手い。

高橋くんも、あまりにも自然に高度な事をやっててうっかり当然のように受け取って見逃しそうになる事あるんだけど、福士さんもそうゆうタイプなのか。
それって本当にスゴイ事だと思う。
努力の跡を消す程の努力。
考えてみれば俳優業ってそれが出来るかどうかが技量になるのか。

それにしても…。
元々の運動神経も優れてるんだろうけど、なんであんなに飄々と平然と…。

台詞の言い方も飄々とした所があってすごく好き。
で、言葉の色が多彩。
あの彼の軽やかさが、物語を随分明るい色にしてたんじゃないかな。

光源氏の親友役として、彼を見守り、呆れ、励まし、寄り添う、穏やかで朗らかな頭中将。
あんなに大切にしていたのに、あんな風に失ってしまった彼の悲しみを思うと、苦しくて苦しくてやるせない…。あああ。

明るい福士さんの頭中将に対して、始終邪悪な色を前面に出してくる波岡一喜さんの長道も素晴らしかった。
彼もまた朗々と響く声で、物語を引き締めて引っ張っていく役。

で、あれ?スケート靴履いてるんだっけ?て分かんなくなるくらい、自然に動いてるスケーターだった。ホント皆さんどうなってるんだ。

この長道の役どころは、完全に悪役なんだけど。
君が大人しくしてりゃこんな事にはっ!って役なんだけど。
でもその原動力はどこから???て興味深い役柄。
好き放題に欲のまま動いてるようで、ひょっとしてとても寂しい人なんじゃないかと、最後に気づかされる。
今まで彼を受け止めて優しく包める人はいなかったのかって、どうしても切なく思ってしまう。

誰もがなり得るのかも知れない人間の負の部分。
邪悪だからとかじゃなく、寂しいからなんじゃないかって。
妄想がドンドン旅に出る。

そうそう、福士さんも波岡さんも、とんでもなく声がイイ!のがイイ!

日本スケーター達の挑戦

荒川静香さんの弘徽殿女御にも結構台詞があって、話し方がとっても自分好みだった。
負の感情が多いし、やってる事は全然可愛くないはずなのに、どこか癇癪を起こしたちっちゃい女の子みたいな可愛らしさを、声から感じたのが好きだったんだと思う。
あの声で、きっとこの人も純粋で、それが息子にだけ歪んで向かってる結果なのかなって思った。
憎めない愛嬌を感じるってゆうか(スタンド席なので顔は見えてない)。
そして、この方も愛が歪む程の寂しさを抱えてるんじゃないかって。

設定的には長道は彼女の見目麗しさに惹かれたのかと思ってたけど、実はその純粋さや弱さに惹かれたのかもと今は思う。どうかな。

けど滑りは可愛さ皆無。迫力満点。
長い打掛(?)を脱ぎ捨てて、ボリュームのある重そうなカツラを感じさせずにあのイナバウアー
この方も、とんでもない事をなんでもないような顔でやってくる。
あの見た目だったからこそのおどろおどろしい迫力があった。
力強さと禍々しいような美しさ。
夢中で幻影の小さな息子を追いかける様は、ゾワゾワする程怖かったですよ…。

そして陰陽師織田信成さん。

事前にスケーターも台詞ありそうだと知った時、スケーターの中では、織田くんが最も違和感なさそうな人だと思ってたんですが、彼は台詞なし。

けど、言葉を発しないからこその、人じゃない感が逆にすごく合ってて、ジョーカーのようなコミカルで不気味な陰陽師がハマってた。

身軽で小柄で動き回ってのあのスピード感が、すごく曲者っぽくてイイ。
宙を舞った時の超人感も自然だった。この人ならそりゃ宙も舞うわって思わせる。

多分出演者の中では唯一人間らしさを見せない、狂気に徹した役。
でもあの笑顔の下で何を思ってるんだろう?って、つい思わずにはいられない。
物語をかき回す見事な陰陽師でした。

アッコちゃん(鈴木明子さん)の朧月夜も台詞がない。でもそれがいい。

同じ語らない人でも陰陽師の超人感とは全然違う。
まるで自分で語る事を取り上げられてしまってるみたいな不自由さ。
そう思わせる所作の一つ一つ。
それでも舞の情感だけで雄弁に悲しみを語る。
アッコちゃんのスケートならではの説得力。
明るい月を思わせるあの衣装が、すごく彼女のスケートに似合ってた。

公式HPの相関図にあった朧月夜の説明(朱雀君が思いを寄せるが、光源氏に恋をする)が、舞台の中では語られてなかったと思うけど、もしかして舞台に登場する(藤壺お披露目の時、朱雀の許婚としての舞を見せる)より前の話の設定なのかな〜とか思うと、更に妄想が進む。(いや、違うかもだけど、妄想なので〜)

この源氏物語、語られてないけど想像させる部分が多くて多くて…。
あぁさすが都部さん(脚本)。

氷艶オリジナルキャラの海賊・咲風を演じた村上佳菜子ちゃんは、台詞と歌あり!
元々綺麗な声の持ち主だと思うけど、少し潰したような声で叫ぶように話し歌う彼女が、荒々しい海で育った海賊っぽさをすごく感じた。
海賊として育った溌剌さと、松浦を慕う切ない役どころを熱演。
アクション系の海賊達の中で、元気に動き回る。

あの広い空間で言葉で演じる経験は、きっと彼女の今後にすごく役立っていくんだろうな。(彼女だけじゃないけど)

俳優陣それぞれのオーラ

そそそそして、松浦様ぁ柚希礼音さん)。
堂々たる海賊の大将。
この氷艶のカッコイイの総本山みたいな人。
長い羽織物の裾を颯爽と翻して、オーラを撒き散らしたかと思えば、自分の恋心に戸惑う繊細さとか。
ウワーン、やっぱり惚れましたー(私が)。
もう切なすぎてどうしていいかわからない。

ただ、もうちょっと光源氏と親睦を深めるような場面が長くあっても良かったのになー。自分の観たい欲としては。だってカッコイイものは長く見たいし。

でもこのバッサリ感が亜門さんの手腕なのかも。
柚希礼音さま、短時間でも抜群の存在感でした。
これが元宝塚のスターか。

彼女に拳を振り上げられたら、自然にウオォーって返したくなる。
光源氏達と決起を歌い上げるシーンでは、私もその中に入って拳を振り上げたいーってなりました。
客席では自重しましたが、TV放映の暁には間違いなくその場でやるでしょう。

光源氏が旗頭的な目印で、松浦が人々を盛り上げる扇動役。
力強く人を巻き込むオーラがキラキラしてました!

そして歌姫、平原綾香さん。
彼女がいないと始まらないし終われない。

ナレーションも台詞も聴き取りやすい穏やかな美声で、聴き惚れました。
スケートもすごく努力されたんだろうなあ。
リンクの上でクルクル回ってもまるで不安を感じさせない安定感。

事前の合宿ではスケート靴が合わなくて苦労されてるようだったから、なんとか上手く靴が馴染むように祈ってましたが、素晴らしく滑らかな演技でした平原さん。みんなスゴイ。
でもやっぱり何と言っても歌。

永遠に聴いていたくなる、しっとり伸びやかで包み込むような歌声。
源氏の無事を祈る歌は、空から声が降ってくるみたいだった。
歌の場面としてはここの町娘達のアンサンブルを含むシーンが特に素敵でジーンとする。
歌声が外へ外へと静かに広がって広がって、また静かに降ってくる感じ。
よみがえる度に心がシーンとなる。寂しさが募ってくる。
本当に素敵でした。今すぐサントラください!

そして
帝と言えば西岡徳馬さん。
もう私の中でこれセットになってしまいました。

そこに立ってるだけで、ああ帝だ!ってなる大きな風格。
低く大きく響く声と存在感が素敵だった。

源氏と藤壺の一夜に気づいてしまった時、一体どんな表情をしていたんでしょうか。
薄明るい月の光で浮かび上がっていた佇まいが、とてもとても寂しそうで。

表ではあんなに堂々たる風情なのに、そんな時に怒りではなく、存在を消すかのように静かに佇んでいた帝に、ミカドーーーーってなる。
全てを知りながら何も言わず、光源氏に若宮を託そうとする桐壺帝。
この人もやっぱり寂しさを抱えた、でも大きな人だと思った。泣

海外スケーターのキャスティング

氷艶は日本文化がテーマでありつつ、海外のスケーターが出演に加わった事も、嬉しい驚きだった。

ステファン・ランビエールの朱雀帝は、彼特有の滲み出るような気品と華やかさ。

高橋大輔光源氏)のライバルと言ったら絶対この人、って事で亜門さんがどうしてもとオファーしたそうですが、確かにこの方以外もう考えられないハマり役。
平安の帝がスイス人でもいいさいいさ。無問題!
素晴らしい貴族の気品でした。

ランビさんだけでも眼福のスケートだけど、リプちゃん(紫の上)や光源氏高橋大輔)との連れ舞いは、眼福の極致。
ため息が出るような優美さ。
光源氏との歌合わせの連舞も優雅。でもなんといっても源氏との狩りの舞は、二人ともすごく楽しそうだった。自分にとって今回のハイライトの一つ。

やんちゃな少年達が本気で遊んでるみたいな。
弓を持って馬で駆け抜けるような疾走感でめちゃめちゃアガる。

ラストの場面、自分も源氏と争って刀を交えていたのに、源氏を殺そうとした自分の母を止めるようにその手で刺してしまった時、彼はどんな顔をしていたんだろう。
遠目にはとした佇まいを崩さないままで、でも顔だけが美しく下を向いていて(私の海馬が正しければ)、深い悲しみが伝わってくるようだった。
崩れ落ちる母親を抱き止める仕草が、品を保ったまま悲しいくらい優しくて繊細で、そこに静かに寄り添った朧月夜にも胸がいっぱいになった。

スイス人の朱雀帝の他にもう一人、ロシア人の紫の上であるユリア・リプニツカヤさんも、もう彼女以外ではこの役を考えられない。
プログラムの撮影時には黒髪の鬘をつけていたけど、本番では彼女の明るい色の地毛だったのも、妖精みたいな存在感でとても好き。

蝶を(鳥かも?)野原で追いかける場面の軽やかなスケート。
この透明感は彼女の天性のものに見える。桃色の衣装をヒラヒラさせながら彼女自身が蝶になって飛んで行ってしまいそうなくらい。

幼くして一人ぼっちになって、光源氏に拾われた女の子。
都の雅やかな世界よりも、野原の明るい陽の中が似合う可憐な紫の上。
権力の中心の世界で嫌気が差していたのかも知れない朱雀君が、一目見て彼女に惹かれたのも、そりゃもう当然の事かも知れないよね。
二人の連れ舞いは、ひらひらがひらひらしてて、優美さの極致だった。

気品溢れる文武両道の太陽のような皇子として描かれながら、どこか何事も達観したような冷めた雰囲気も感じてた朱雀君が、どうしても手に入れたいと執着してしまった相手。
野に咲く花のような美しさを持つ彼女を、暗い都に閉じ込めてでも欲しがった心が重い。
うう、重いよ。辛いよ。

最後、風のように現れて、一切の躊躇なく光源氏の酒杯を一気に飲み干した紫の上。
台詞がないからこそ、動きの迷いのなさから思いの強さが真っ直ぐ伝わってきて、辛い。
氷艶の紫の上、可憐で儚くて、賢くて強い、素敵なユリアの紫の上でした。

源氏物語の世界観

「月光かりの如く」の人々は総じて皆寂しい。切ない。
皆、あんなに誰かを愛したがってるのに、何かが掛け違って誰も報われなくて、雅で華やかな世界の中で、皆が満たされない悲しさを抱えてる。
その全ての孤独を象徴するような光源氏

前回の感想で、何も皆で消えてしまわなくても〜😭って書いたと思うけど、これが源氏物語の無常観なのかなと思う。
確か原作でも、紫の上を悲しみの中逝かせてしまった事を悔いて悔いて、衰弱してほとんど後を追うように逝ってしまったんだっけ?
氷艶の源氏は、刀を離して一人になった時点で、あれはもう…そうゆうつもりだったのかな…。

誰もが寂しくて、愛したくて、報われなくて。
原作ではその心情が女性側の描写に割かれてたように思うけど、対する男達も皆、とても寂しい思いをしてたんだなあ。
光源氏の孤独と寂しさが、新しく胸に入ってきました。
源氏物語の原作も、今読んだらまた違った目で読めそうな気がする。

それにしても、あまりにも登場人物がみんな魅力的で訳ありで、全体的に足りない!もっと見たい!って欲張りになってしまう。
主人公以外も、特に、長道とか、松浦と咲風の過去も気になるし、その時々の心情ももっと掘り下げて知りたくなる。
弘徽殿も朱雀も紫も朧月夜も陰陽師も皆。
でもそれじゃ2時間じゃ終わらない。

けど説明されてない部分も端々で感じさせてて、だからこそ想像(妄想)が膨らむ。この余韻がもしかして宮本亜門さんの罠なんでしょうか。ありがとうございます。楽しんでます。

後は9月1日のBSでのTV放送を楽しみに、そして、絶対あると信じてる円盤化を楽しみに生きていきます!

あ、写真集も出るんだった!衣装展もか。今回はフットワーク軽いですね。そして今度こそ2冊出るんですね。やったーーーーー!!!

hyoen.jp

感想その1(主演の高橋大輔さんについて)
感想その3(主に物語のキャラ語り、光・朱雀・紫について)