はてはてマーチ

好きなプログラムを好きなだけ語る場所

2012年世界フィギュアスケート選手権

2012世界フィギュア 男子フリー

この年のニースでの世界フィギュアスケート選手権は、素晴らしい演技続出ですごく楽しい大会だった。
高橋くんのこのシーズンのプログラムを振返ってたら、この時の試合の流れの素晴らしさがまた沸々と記憶に甦ってきた!という訳で、既に書いた高橋選手以外の他の選手達のプログラムについて。男子フリー。

深夜にまたがるTV放送。前年までだったら多分録画して寝てた。でも一年前に高橋沼に落ちてしまった以上、録画で後からなんて無理。待てない。眠い目をこすってでもちょっとでも早く演技を見たい。
電気を消した真っ暗の居間のTV前で、ヘッドホン付けてドキドキしながら観たのも良い思い出。

相方に、もう寝るから大声出さないようにね〜と念押しされながら見ましたが、念押されてなきゃどうなっていたやら…!!
続々と生まれる素晴らしい演技。

流れとしての熱狂

一人の選手が作った熱狂の空気を、次の選手がまた違う熱狂に作り替える。違う個性、違う魅力を、手を替え品を替え次々と魅せてもらえた。いやもうTV越しでも観客冥利に尽きるような大会だった。

試合って筋書きなしでこうゆう事が起こるのが面白い。
フリーの演技順は前日のショートの結果とクジで決まる。偶然に決まったこの順番で次から次へ会場の空気が動き、熱気が熱気を呼ぶような熱い興奮がどんどん新しく生まれていく。高まる期待とそれ以上に応える選手達!

とにかく一つの流れとして素晴らしかった箇所を、長くなるけどまんま演技順に書いてみます。

羽生結弦「ロミオ&ジュリエット」

羽生くん〜コンテスティ〜アモーディオ〜ジュベール、ここの流れが鳥肌もの。それぞれがそれぞれの魅力を炸裂させていって、興奮でどんどん目が冴えて行った。

その発端になったと思うのが、シニアワールド初参戦、17才の羽生結弦選手。

これ、何回見て何回泣いたんだろう。パブロフの犬かってくらい。

登場時から集中した良い表情で、最初の4回転トゥループから素晴らしい!コマのようなジャンプの回転がとても綺麗。シュルシュルと音がしそうなくらい。

そしてスピンの形がまた美しい!

足を抱えてのスピンとか、体の柔らかさが活きたとても綺麗な形で、そこに添えられた手のアクセントが壮大な音楽と合わさってすごくドラマチックで。
そして音楽の勢いとスピンの勢いがピッタリなんだけど!もしかして音に合わせて回転速度をコントロールしてるの???スゴイ!

ジャンプやスピンなんかの回転技が、軸が細くて正確ですごく綺麗で。中でも特に好きなのがパンケーキツイズル
ピアノの静かな調子から、少しずつ弦の音が重なってどんどん盛り上がっていく場面、しゃがみ込んで片足を前に出してクルックルックルッと旋律に合わせて回ってくるところ!回転の速度と音の勢いが同じなんだ!
しかも、低い位置の姿勢から段々に高くなっていくのが、弦の音色がどんどん増えていく盛り上りと相まって、一瞬の振付なんだけどもう毎回、キターーーってなる。
この音の時にこの動きが見れて幸せ!って思う。つまりハマる。奈々美先生素晴らしい!!!コレ大好きです!(振付が当時のコーチ:阿部奈々美さん)

途中、ステップシークエンスを終える辺りで何かに引っかかったのか急に倒れる。
痛そうな転倒で立ち上がるのに一瞬の間があって、TV前の自分も前のめりで、だ、大丈夫か????って思った。
ここまでノーミスだった中あまりにも思わぬ場面での転倒で、体も心配だけどこれは精神的にもキツイんじゃないか…?客席から思わず励ましの拍手が起こる。

だけど、いやもう、ここからがスゴかった。
自分もだけど会場中が一気に引き込まれていったのが分かった。
引き込まれたきっかけが転倒って、普通に考えるとオカシイと思うんだけど、でもそうなんだ。
正確には転倒からじゃなく、そこから立ち上がってすぐに高難度のジャンプを決めたトコから。見てるだけのこっちがまだ動揺抜けてないうちに、トリプルアクセルと3トゥループのコンビネーションジャンプ。決めたよ!この状況で!
更に立て続けに3連続ジャンプ!涙腺決壊!
その後も次々にジャンプを決めていく。なんという底力。おそろしい子!

最後のステップはもう気力だけで進むような。
満身創痍に見えるのに、殺気とも言える程の迸る気迫が、あの有名なロミオの最期、怒りに燃えて死に向かう悲壮感を思わせる…。
鬼気迫るような激情なのにあまりにも刹那的で儚くて。
ロミオの真っ直ぐで周りを見ない、若さ故の危うさと眩しさに重なって、心を動かされた。あふれ出す何かに感情を掴まれる。

闘争心を前面に出した気迫の演技が、音楽のドラマチックさと相乗効果を生んで、そのエネルギーに巻き込まれていく感じ。

このシーズン、体力を最後まで持たせて最後のサルコウジャンプまで決める事を課題にしていた羽生選手。この時はついに最後のジャンプもしっかり決めて、ジャンプパーフェクト!

演技後に映った涙の奈々美コーチにも貰い泣き、ってもう既にこっちもボロボロに泣いてたんだけど、更に追い打ち。
前年の大震災で仙台のホームリンクが一時期使えなくなったり、本当に大変な道のりを一緒に歩んで来たんだろうな。本当に良かった!!!
会場も大興奮でした!

サミュエル・コンテスティ「ラ・ヴィ・アン・ローズ」

前の選手が作り出した熱気を、一気に自分色に染め変えた、イタリア代表のサミュエル・コンテスティ
29才のベテランですが、自分が知ったのはこの時が初めて。素っ晴らしかった!

最初の音楽の鳴る前からのコミカルな表情とポーズで、もう完全に自分の世界を作り出してた。会場の空気が一変する。

始まった瞬間に、もうサミュエル劇場
リンクが突然、お洒落なパリの街角に変わった(気がした)!
アコーディオンの音色に乗せて、洒脱で陽気な、いかにもフランスな雰囲気をパントマイムを交えながら演じていく。

明るくてコミカルで、ちょっと哀愁もあって。
世の中を斜に構えて達観しているような風情も自分は勝手に感じてて、ベテランならではと思わせる味わい深さ。もちろん29才は人生に於いてはまだまだ若い筈だけど。
何だかエスプリって言葉が浮かんでくる。(エスプリってホントのトコロよく分かってないけど…)
酸いも甘いも噛み分けた後、でも結局人生は楽しまなきゃ損さ!って言ってるような。
(全てが個人の妄想です)

サスペンダーをいじり倒しながら、楽しげに軽快に踊っているのを見ると、もうこっちもウキウキしてくる。ワルツに合わせて踊りだしたい気分になる!ウキウキの幸せ!
で、ウキウキしてたらあっという間に終わってしまった!

解説を聞いて初めて知ったけど、もともとはフランスの選手だったのをキャリアの途中で所属を変えてイタリア代表になった選手なんですね。
客席に挨拶をする時、会場を映した映像にイタリア国旗に交じってフランス国旗も見えた。

古巣のフランスである会場でこんな会心の演技が出来て本当に良かった!
会場のお客さんもノリにノって、とっても温かい空気でまたジーンとする。
今こそバラ色の人生だ!

4回転ジャンプは入れていない選手だし点数はそこまで伸びなかったけど、こうゆう演技が見られるのがすごく嬉しい。

最終的な点数や順位などの数字だけでは分からない、フィギュアスケートの楽しさや奥深さを改めて教えてもらいました。

フローラン・アモディオ 「Memories of Sobral」

フランス代表だけどブラジルにルーツを持つ選手。その彼の為にニコライ・モロゾフコーチが編曲したというニコライ渾身のプログラム。
序盤の情緒溢れるしっとりした音楽から、中盤で一転、踊りまくりのブラジル魂が炸裂する。もう一度曲調が静かになって、と思ったらお次はサンバ!めまぐるしい変化!

音楽としては変化が激し過ぎて、自分はちょっと待って!!って息切れしてしまうけど、そんな事はまあまあどうでも良い。楽しいから。

アモディオ選手の、踊る事が楽しくて仕方がない!!!って感じの純粋な気持ちが伝わってきて何故かじーんと泣きそうになってくる。
これはちょいちょい入るあの情感たっぷりの音楽の影響もありそうな気がするし。なんでこんな忙しない編曲?って初めは思ってたけど、してやられたかも。ニコちゃんめ…

アモディオ選手のスケートへの気持ちが、音楽の効果でより迫って来た気もするし、あの音楽だからあんなに楽しそうだったとも言えるし、良い相乗効果だった感じ。

ジャンプを全部終えた後のストレートラインサンバ!は、会場を煽って煽って踊りまくる。お客さんもノリノリ!総立ち!

幸せ感いっぱいの演技でした。
楽しかった!

ブライアン・ジュベールマトリックス

帰って来たジュベール!待ってたジュベール!ジュ・テーム!!!

深夜というのは何もなくてもテンションがオカシクなるモノなのに、こんなに素晴らしいものを立て続けに見せられたら、もうどうして良いか分からない!

怪我のためにこのシーズンのグランプリシリーズは欠場していた。その後出場したヨーロッパ選手権は良い成績ではなかったらしい。でも母国フランスでのこの世界選手権で、ジャンプノーミスのこの大復活!!!

ジュベさん、マトリックス何回目?とか、いやいや、そんな事はどうでも良い事です。だって似合ってるもの。格好良いもの。楽しいもの!!!
ジュベールさんにおかれましては思う存分マトリックスの世界を追求されて下さい。

最初の4回転を鮮やかに決めて客席のボルテージは一気に上昇。
こうゆうハリウッド的なトラマチックさがめちゃめちゃハマる。気持ちイイ!

ただそれも豪快なジャンプが次々と決まっていってこそ。
この時はジャンプが決まる度にジュベさんのテンションも上がっていって、こっちも頭の中空っぽにしてただひたすらワクワク出来るのが楽しかった!最後のコンビネーションジャンプも決めたところでガッツポーズ!

この人のステップも好き!
ダイナミックなジャンプのイメージが強いし、実際ジャンプ決まるとスカッとして嬉しいけど、ステップもまた、骨太な男らしいステップで気分が上がる。
手が割とよく指差し確認の状態になるんだけど、あのちょっと古い…昔懐かしい趣きを感じる煽り(?)も楽しい!スナップの効いたシャキーンって手の動きも大好きです!

後、意外にもスローパートで動きの柔らかさにほわ〜ってなるトコがあって印象に残った。こんな柔らかい動き方もするのか〜って。いくつになっても選手は進化し続けるんですね。すごいなあエライなあ。

高橋選手の一つ年上で、長年一緒に同じ試合で闘って来た選手。この人が元気でいてくれると何でだか嬉しい。ホッとする。
観客と繋がる事ができるエンターテイナーな選手だと思う。

ジャンプノーミスの、帰って来た力強いジュベールに、会場再び総立ち!!!!ほとんどお祭り騒ぎの大歓声!!!ああ、いい風景だなあ。

素晴らしい演技をありがとうございました!


ニースのお客さんは盛り上り上手で、地元選手だけにでなく、良い演技には惜しみない拍手で大盛り上り。とても温かい雰囲気の会場でした。この後の高橋選手の時も大興奮で盛り上がってた。
納得のいかない点数なんかが出るとBoo! Boo!と大ブーイングで、ジャッジに対しては自分達の意見をきっちり表明してくる所がヨーロッパだなあと思った。(TV前からの感想)