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「高橋大輔」を好きなだけ語るブログ

高橋大輔:破天荒 (炎の体育会TVの感想含む)

高橋大輔って人は、つくづく常識では計れない人だと思う。
以前、PUMAの#破天荒*1ってキャンペーンにも出ててたけど、まさに破天荒:前代未聞、常識破り、規格外。
「破天荒」の語源は、天荒(未開の荒れた土地)を破り切りひらく、らしいですが、まさしく新しい場所を切り拓く!
文字にすると豪快な印象もあるけど、高橋くんは豪快とはちょっと違うのも面白い。
軽やかで、ふわっとしてて、すごく鮮やかに破天荒だと思う。

高橋成美さんは、「人を驚かせる奇抜な行動」って表現してた。それに「勇気づけられる」と。
町田樹さんは、「安住しない姿勢が格好いい」と語ってた。

一見、とても穏やかな常識人にも見えるのに、ことフィギュアスケート・表現に関しては本当に自由で、発想の着地点が常に予測不能な人なんだなあ。笑

高橋くんのスケート人生を、2005年からなんとなく見続けてきて、2011年からは必死で見続けてきて、2014年以降は自分のビームで穴が空かないか心配なくらい凝視し続けてきて、その間、いったい何度、自分の常識を覆されてきたことか。
しかも年々パワーアップしてて、この先も読めなさ過ぎて恐ろしい!(喜)🙌

印象の新鮮さ

思えば、(一方的な)出会いの2005年から、なんか一風変わった人キタ!という始まりでした。
自分の勝手なフィギュア男子のイメージは、バレエっぽい貴族の王子様的優雅さか、体操っぽい直線的な動き、そのどっちかだったのに(私の当時の感覚)、高橋選手はどっちでもなかったのに、まず惹かれた。
見てるとこっちまで風を切ってスケートしてる気がするような、不思議な感覚にワクワクした。
観て楽しむってより、演技の中に自分が入り込んだ気分になる。

何がどうしてそうなるのかずっと考え続けてるけど、いまだに分からない。
多分、音楽踊ってるんじゃなくて、音楽踊ってる、いや違うか、音楽踊ってる、と感じるからかな。まだ考え中だけど。
とにかく、こんなスケートをする人がいるのかって、すごく新鮮だった。

スケートでHipHop

2007年には試合でHipHopきめてきちゃうし(白鳥の湖)。
スケートでヒップホップですよ。
体ごとターンテーブルで、ステップがスクラッチなんですよ!氷を蹴散らしてのランニングマンですよ!興奮で呆ける。
それで既に完全KOなのに、そのシーズンのエキシビション(EX)プログラムは暗黒舞踏
はい、あれは暗黒舞踏(バチェラレット)!!!
試合後のEXを気楽に鑑賞するつもりで見始めたら、突然深淵な精神世界に突き落とされるとは。
自分のフィギュアスケートの概念が、どんどん壊されていった。鮮やかに、楽しく。

HipHopをやったシーズンは世界ランク1位、4回転ジャンプも好調で歴代最高得点も記録。
で、迎えた翌シーズンの直前、
なんと右膝前十字靭帯の断裂+半月板損傷の大怪我で戦線離脱。

大怪我からの復活

大怪我の手術で、オリンピック前年が全休になり、その翌シーズンに日本男子初のオリンピックメダル獲得!も、この大雑把なまとめだけで、いやいやいやそんなことある?ってなるくらい、とんでもない。
でも中身を知るともっととんでもない。

この大怪我でのピンチの乗り越え方は、つい最近の「炎の体育会TV」でも取り上げられてて、自分も一緒に振り返り。
この時の高橋選手は、本当にドン底まで落ちて、自身と向き合って、大切な人と向き合って這い上がって来たんですね。

朝から晩まで痛みに耐えながらリハビリを続けても、回復が本当に間に合うのか分からず、周りからは期待を集めているって状態がどんなものか…、自分は経験したことないから分からないけど、想像だけで吐きそうな重圧だ。

でも高橋くんは、外からの重圧より「自分で自分にかけたプレッシャーに負けた」と振り返ってた。
復活に意気込んで追い込み過ぎ、突然プツっと切れたと、今は穏やかに笑顔で語ってたけど、そうゆう自分自身もちゃんと見つめられたから、その後あんなにしなやかに、強くなったんだろうな。

怪我後のシーズンの高橋選手は、以前とガラッと雰囲気も顔つきも変わってて、詳しい事情を知らなかった私でも、急激に人間が大きくなったのを感じた。
コーチである長光歌子先生の、「やめてもいい。私が壁になる。」って言葉に「守られた」と言い、それで肩の力が抜け次に向かえたって話も、本当に愛に育つ人なんだなあ。

高橋大輔さんは、弱さも沢山抱えてるんだろうけど、やっぱりとても強いと感じるのは、最終的に自分の弱さと、人の心からの言葉に、きちんと向き合える人だからなんだと思う。
そして、自分の経験が誰かの手助けになれると思う人で、頑張り過ぎてる人には、(力を)抜いていいと思うって、優しく寄り添う人なんだな。

「真っ直ぐ行くよりぐねぐね行った方が、結果良いものを沢山拾えてきた気がする」と言った高橋大輔さん。
頑張り過ぎて一度壊れそうになって、そこからコーチへの信頼で立ち上がった人が、頑張りすぎてる人にかける言葉。
人に寄り添われて、人に寄り添って、ぐねぐねと進んでいく高橋くんの在り方が、とても好きです。

アジア人男子史上初の評価(と五輪メダル)

怪我のリハビリを終え、やっと氷上に乗れたのは確か2009年4月。シーズン開始の試合までたった半年。ジャンプはまず1回転からの練習だったと聞く。本当によく間に合ったなあ。
10月についに試合に復帰し、1試合ごとに成長を見せて、当時跳ぶ選手が少なかった4回転ジャンプにも挑んでた。

当時のルールでは4回転はかなりの高リスクで、少しのミスでも大幅に点数を引かれたけど、高橋選手は、僕は跳びたいからと、絶対に回避しなかった。
その姿勢もカッコ良かったけど、何より、スケートそのものが楽しいって全身で伝えるような演技に、どんどん夢中になった。見てて心が浮き立った。

元々高橋選手は、技術の正確性だけじゃなく、魅せる技術も持ってる選手だったけど、怪我から復活した後この部分がより深くなって、国際ジャッジからも表現者としての評価が格段に上がった。
実は、アジア人男子に対しては、フィギュアスケート史上の評価だったと思う。

フィギュアスケートは、ヨーロッパの貴族的な遊びから発展したスポーツらしい。試合の後にバンケットと呼ばれる選手や関係者の交流パーティーがあるのも、その名残を感じる。
フィギュアは言わずと知れた採点競技だけど、つまり採点の美の基準は、ヨーロッパにあった。
スケートの技術に、体型や肌の色なんて関係ないとしても、人間のする評価にはどうしたって主観が入る。ましてや表現の評価となると、長年培った先入観を変えるのは、なかなか難しい。

日本(アジア)の男子選手は、技術を高く評価される選手は出ても、表現の点数は評価が渋いままだった。特に五輪のメダルへの壁は、ガラスの天井のようなもの。
2022年の今となっては、東洋男子全盛の時代で、かつてを知らない人には信じ難いことかも知れないけど、たった(?)12年前の話。

この種目での日本選手がオリンピックに出たのは1932年が初らしい。2010年の高橋選手の五輪メダル獲得までは、78年。
同じ2010年、100回目となる世界選手権で高橋選手が世界王者になったのも、もちろんアジア人男子
これまで、ヨーロッパ(というか白人の選手)至上主義がどうしてもあった世界で、その価値観をひっくり返した初めての男子選手が、高橋大輔選手だ。

先輩の選手達が努力を重ねて少しずつ天井を上げてきた。特に2002年本田武史さんの五輪4位は、メダルまで後一歩の場所だった。
で、ついに破ったのが高橋選手なんだと思う。一人の力ではない。
高橋選手自身が強くそう思っていて、先輩達が積み上げてきた結果があったからこそ、その上を目指すという高い目標を作ってくれた、とYouTubeの「炎の体育会TVノーカット版」で話してた。
でも
高橋選手の持つ華やかな魅力が、この競技の長年の固定観念を覆したのは、間違いない。

プログラムの独創性

五輪でメダルを獲った後、プログラムの独創性はますます際立っていったと思う。
タンゴの「ブエノスアイレスの四季」は、舞台芸術のような耽美の世界で、これ本当にスポーツの試合の場でやっていいのかなって思うくらい、エ…ええっと、耽美的だった。

試合と思えないと言えば、ショートプログラムの「エル・マンボ」も。
その後も何度もエキシビションで登場した、観客を煽って盛り上げて踊りまくるエンターテイメントプログラム。

2011−12年シーズンのVasとブルースは決定打。
Vasの異世界観。ブルースの抜け感と余白。すべての技術が表現のために使われてて、音楽によって魅せ方を変える。
こうゆう高度な高橋くんの表現技術は、一体どれくらい点数化されてたのか…ちょっと自分にはわからないけど、はっきり言って、試合の点数には必要ない要素も多過ぎると思う。と言うか点数化出来ない部分が多過ぎるのか(同じか)。
グルーヴとかパッションとか、具体的に定義しづらい感覚がめちゃめちゃ秀逸なのって、ジャッジの人は困るかも。
でも自分にはそれ超大事。そこが中毒のモト。本当に感謝です。

特に、2012年シーズン最後の国別対抗戦でのブルースで、会場の熱狂がライブ会場状態だったのは忘れられない。
高橋選手の演技が進むなか、うねるように熱気が高まってくのが、画面越しにも伝わってきた。陶酔

演技後の得点待ちの時は、他国の出場選手達も日本のスペースに寄ってきて、大喜びのお祭り騒ぎだったのも、フィギュアスケートっていいなあって思った。

2022年現在までの、ダイスケタカハシ規格外エピソードを箇条書きにしようと始めたら、2012年まででこんなに長くなってしまった。まだあと10年あるのに!
炎の体育会TVのせいで詳細に振り返り過ぎたからかな(人のせいにする)。

長過ぎるので流石にここで止めて、次に続きます🙏

*1:高橋大輔さんのスポンサーPUMAさんの、ブランドが目指す新しい世界観をショートムービーで発信するキャンペーン(2020年)https://www.youtube.com/watch?v=kWRkobd6cWE