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高橋大輔 沼への道 step7 ブエノスアイレスの冬

2010-11年フリープログラム
ブエノスアイレスの冬

あんまり長いのでエントリーを二つに分けようかと思ったけど、どこで切ったら良いのか分からず、長いまんまアップ…。せめて目次をつけます。

プログラムとしての魅力

初戦のジャパンオープンで観た時から、すぐに気に入ったプログラム。eyeとはまた違う、哀愁の色気が漂う切ないピアソラのタンゴ。

まさかカメレンゴさん、ダイスケにタンゴを振付るなら俺ならこうだ!ってeyeの宮本さんに対抗心を燃やした訳じゃ…ないですよね。まさかね。はははー笑
でも同じタンゴでも曲によってこんなに違うんだって気づかされて驚いたし、完全に違う世界を描き出している高橋選手にもやっぱり驚いた。

ジャンプはなかなか安定しなかったこのシーズン。だけど醸し出す世界観の美しさは、耽美というしかない美しさだった。この年の高橋選手の美しさ具合はちょっと尋常じゃなかったと思う。

オリンピック翌年のこのシーズンはモチベーションを上げられず苦労したと後に本人は回想していたけど、ひょっとするとそのちょっと気怠い感じが、あの度を超してだだ漏れてるような色気にも繋がってたのかも…

首のアクセントが色っぽく効果的に使われていて、何かを追い求めるような情熱と失意に沈むような切なさが迫ってくる。舞台芸術かと思うような耽美の世界。
顔を撫で、頭を振り、首で止める。これでもう…あの…。

あの、カメレンゴさん、これ試合用として振付たんですよね…?あの、ホントに?あ、そうか、振付の段階ではこんなだだ漏れの演技になるとはカメさんだって気がつかなかった…のかな。いや、どうかな。
照明を効かせてショーアップした場でも見てみたいプログラム。明るい試合会場で見るにはちょっと背徳感さえあるような…。
そして多分、このピアソラが、翌シーズンのショートの振付:デイビット・ウィルソン氏の引き金を引いたような気がするんだけど…どうかな。あ、それを言うと元を辿ってeyeの振付師・宮本賢二さんのせいなのか???
…まあいいや。

ええと、つまり、素敵だった。

音の表現がね、宮本さんが高橋選手は楽器を演じ分けられるという風な事を言ってた事があるけど、この曲は色々な楽器が印象的に入るから特によく分かる。
ピアノの叩くような音、弦の情感たっぷりに伸びる音、バンドネオン(多分)の狂おしく伸びる音、少し乾いて響くリズミカルな足音のような響き、打楽器のアクセント。全部が高橋くんの身体の動きに操られてるように聴こえてくる。

気迫があったのは、やっぱり全日本選手権ショートプログラムで出遅れたからこそなのか、ステップの勢いが凄まじかった。

ただ、鑑賞者ってホントに勝手で冷酷なもので、特にブエノスアイレスの冬は好き過ぎるせいもあって、毎回実はちょっと満足しきらずに、次はもっとスゴイのが来るハズだと思って、次回に持ち越して期待をしてた。あとちょっとあとちょっと、多分もっとスゴイのが来るハズ!って。
観ているだけの人間の期待を満たされたいという欲は、果てしないし残酷なもんだなって、自分を振返ってそう思う…ホントに…。
バンクーバーシーズンから高橋大輔という選手本人に肩入れするようにはなったけど、まだこの程度でした。

モスクワワールドのフリー

それが完全に一変したのが2011年世界フィギュアスケート選手権。あのモスクワワールド。

世間的には、というか高橋大輔本人的には「惨敗」という言葉で語られるモスクワワールド(それでも世界5位)。自分がはっきりと、自覚を持って、高橋大輔という選手に落ちたのは、この時です。断言!

冒頭の4回転ジャンプの踏み切りで左のスケート靴のビスが抜けるという大きなアクシデント。演技を中断し、決められた時間内に抜けたビスを止め直さないと演技が出来ないという事態に。
なんとか間に合わせて再開できたけど、ビスが抜けて飛べなかった4回転はもうやり直せない。目標にしていた世界選手権の連覇はこの時点で不可能。
そんな状況だったにもかかわらず、再開後の演技からは全力で表現しようとする意思が伝わって来た。

再開後すぐは少し慎重な感じはした。間に合わせの処置で続行した左の靴はビスが抜けた時に靴底も壊れていたらしく、いつどうなるか分からない不安もあったはず。左エッジで踏み切るアクセルでミス、ほぼ左足だけで跳ぶサルコージャンプは転倒。

にもかかわらず、ステップでの表現では世界に入り込んで見てた。切なさや優しさが滲み出るような演技。儚いような一瞬の笑顔。最後のステップでは出せる力の全てを使ってプログラムを魅せようとする気迫。もう心を鷲掴みにされた。大袈裟ではなく。鷲掴みです。ホントに。鷲掴み(三回目)。鷲掴み!(四回目)

不運なアクシデントの為に上手く滑れなかった、で終わったとしても仕方がなかったと思える状況だったのに、続行後も靴の影響でミスが出て落ち込んだだろうに、あの最後のステップでは、プログラムの世界を伝える事を絶対に諦めない、表現者としての意地を見た気がした。振付を「こなす」事はしない。表現する事をやめたりしない。

あとこれは余計な事だけど、大急ぎで渡部トレーナーが高橋くんの靴を直している時、会場にも映し出されている国際映像に、会場内に居たどっかのチンとかクアンタとか言うおじさんが映ったんだけど、これが本当に腹の立つ態度で!そこをカメラに抜かれた事に気づいて大慌てで澄まし顔を作ってたけど、それに会場が失笑した。
その時高橋くんも会場が急に沸いた事になんだろう?ってなって…映像で状況を察したのかどうかは分からないけど、一瞬何とも言えない顔で俯いたんだ…。
靴が壊れた時もそれをジャッジに伝えてた時も応急処置を受けてる時も、落胆の表情を一切見せずに静かに前を向き続けていた彼が。

その後、靴の処置が時間内に間に合って再開してのあの演技だった訳ですよ!!!カッコイイしかない!!!あのおっさんに心の中でライフル銃を構えて一瞬どす黒くなってしまってた自分の心を、高橋くんのスケートがあっという間に浄化してくれました!
どんな不運な状況でも、どんなに落胆していても、最後まで観客に表現を見せようとする姿がすごくカッコイイし美しかった。

辛い時にこそ滲み出る品格

しかも、その後の高橋選手の態度も素晴らしかった…。

当時よくメディアで出た、演技終わって顔を覆って俯いたように見えるシーンがありますが(惨敗とかいうフレーズと一緒によくあるやつ)、落ち込んでる感とか表したいんだと思うけど、あれ、笑ってますよね。
やっちまった〜〜〜って感じの苦笑いなんだけど。
そしてその後お客さんをちゃんと見て、応援ありがとうございましたって、笑顔で挨拶をしてる。

案の定伸びなかった得点を見ても、しょうがないなあって感じでサバサバと笑ってる。どうゆう切り替え方をするとああなるんだろう。本人の清々しさにこっちも救われる思い。

美しい敗者だと思った。ホントに美しかった。敗れた人を見てこんなに美しいって思う事ってちょっと滅多にない。
思うような結果が出なかった時の振る舞いにその人の本質が出るとよく言われるけど、それなら高橋くんは本当に美しい心を持つ人なんだろうなと思う。

あの年のワールドは大抵の日本のファンならそうだと思うけどちょっと特殊な心境があって、本来なら東京が会場予定だった世界選手権が、直前のあの大震災と原発事故の為に中止、モスクワが代替地を申し出て日程が延期された中での大会だった。

高橋選手はもともとバンクーバー五輪で引退のつもりでいたのを、この年の世界選手権が東京(追記:正確には「さいたま」でした)だったから現役を続けているような状態だった。それが中止という事態。何よりあの大きな震災が引き起こした傷。

延期になった世界選手権を控える中、神戸でスケートのチャリティーを開催し無事成功させ、その後迎えた連覇を狙う大会でのアクシデントだった。

試合の後、靴の事を全く言い訳に使わなかった。結果については「自分のミス」「自分の力のなさ」だと話している。なんて潔くてカッコイイんだ!

日々、とんでもない衝撃の力に耐えて来ているスケート靴とブレードとそれをつなぐビス。毎日きちんと管理をしていてもその靴のどこかが不意に壊れる事はある。それがワールドの演技中に起きてしまうなんて不運と言う外にはないのに、それを結果の原因の一つにしてしまったらスケート靴のメンテナンスに関わった沢山の人達が、どうしたって責任を感じる事が分かっていたから、だよね。

その後すぐに、ソチオリンピックまで現役続行の宣言をしてくれて、こっちはもう大喜び。応援する!応援しますとも!あんなに琴線に触れてくるスケートと音楽の表現を、この先もまだ楽しみに出来る!次のオリンピックの場でも絶対に見たい!まだ見られる!!!やったーーー!!!結果的には嬉しい決断をしてくれました。

自分でも思いがけない程の喜びっぷりで、自分はホントに高橋大輔くんのスケートが好きなんだなって何度目かの実感をした。しかももはやスケートの表現だけでなく、この人の生きる姿勢がすごく好きなんだなって思った。

バンクーバーシーズンで、既に自分がかなり高橋選手に傾倒してる事は気づいてたけど、そうは言ってもTVで試合が放映される度に特別楽しみにしてたくらい。もうすぐ引退という思いがあって自分でセーブをかけてたのかも。

高橋大輔情報を読み耽る

無意識にかけていたセーブを外してしまった自分がまず何をやったか。
こんなにも格好良くて美しい人について、自分の他にも、カッコイイ!美しい!と思っている人が絶対いるに違いない!!!という確信で、とりあえず「高橋大輔」と「感想」を入れて検索した、ら、宝の山がネットの中に!!!そして始まったブログ巡り。

もう出るわ出るわファンの方のたくさんの素晴らしいブログ達!しかもそこで紹介される、泉のように尽きない高橋くんの人柄を伝える素敵エピソードの数々に出会ってしまった。直近の話題だけでも漢前な話が山盛り。

それまでの自分は、年末のグランプリファイナルでのアクシデントの詳細も、全日本の時に高橋くんの身体がどういう状態だったのかも、よく知らなかった。

あの時高橋くんは、事故は事故として誰かを責める事になりそうな言葉は一切避けて全て自身の実力という事にしていた。だから、私のようなぼんやりニュースを追ってるだけだった人間には、彼の身体にとってあの衝突事故がどれだけのダメージだったのか知らないままだったんだ…。例え自分自身が誤解されても、誰かを傷つけかねない言い訳はしない。漢前め…。

世界選手権が震災で延期になった時は、「居ても立ってもいられない、何か自分達でも出来ないか」と宮本賢二さん、本田武史さん、田村岳斗さん達と相談して、極短期間の準備で神戸チャリティを立ち上げてやり遂げたらしい。会場から運営など企画を全て自分達で考えて自分達が奔走して行うチャリティーアイスショー。通常のアイスショーにゲスト出演するのとは立ち位置も責任も全然違う。

それを大切な世界選手権の試合前の時期にもかかわらず、開催者側として出演したのは、本当に「居ても立ってもいられなかった」という気持ちがよく分かる。あの大震災と原発事故の悲痛な空気の中、自分も何かの力になりたい役に立ちたい、という真摯な気持ちが伝わってくる。

でもこれも、大きく宣伝をした訳でもなく、チャリティーを成功させた後もこれについて殊更本人達が発信する事はなく、やっぱり自分のようなボーッとした上辺のニュースしか追わない人間は、チャリティーがあった事こそ知ってたけど内容も彼が果たした役割もよく知らないままだったんだ…。

全部全部、ファンの方達の愛あふれるブログの中で知りました。皆様の愛いっぱいの語りのお陰で、氷上以外での高橋大輔さんの人柄にまですっかり参ってしまいました。

バラエティ番組などのオフアイスまで

この後、演技以外の動画の旅にまで出てしまい、なんとモスクワのファンミーティングの動画まで見つけて見てしまった。

ロシアの美女達に囲まれて、話をする人を代わる代わる見てキョロキョロ+ニコニコしてるのが可愛い。お手本にするようなスケーターはいる?って聞かれたらロシアのアイスダンサーの名前を上げてたけど、好きなタイプの女性はって聞かれた時、まるで悪気なくアメリカ人のメリル・デイヴィスと答えてロシアのファンにちょっとがっかりされちゃう場面が面白くてめちゃめちゃ楽しんでしまった。

いや!これだけロシアの女性に囲まれてて、「ここにも沢山の女の子がいますが」って前置きされといてその答えはないでしょう!でもそんな正直な高橋君が素敵だ!ってこの自分の感想がもう完全に沼に入ってる証。アスリートを応援する姿勢から完全に逸脱しちゃったよ。

ついでに書くとこの時、髭男爵の絵まで見つけてしまった。2008年のバラエティ番組で「ぷっすま」という番組の中。
大怪我をする前の時期だけど、この頃から既にオフアイスも随分感じの良い青年だったんですね。同じ人間なんだから当然か。
天然で可愛い浅田真央ちゃん、華やかな安藤美姫ちゃん、しっかり者の中野友加里ちゃんという強い女子3人に、ちょこんと一人男子で参加して、ニコニコとオチを担当している姿がなんか可愛い。

髭男爵を実物を見ないで絵に描くというお題で、高橋くん絵のセンスは確実にあるのに、本物の髭男爵を知らないせいでエライ面白い代物を出して来て、真央ちゃんに「それには勝ちました!」と笑顔で言われ、案の定最下位の評価。それでケラケラと楽しそうに笑ってるの。嗚呼可愛い。

つまりこの人なんか素が可愛いという事に気づいてしまった。いや、何となくは気づいてたんだけど、もうめちゃめちゃ可愛い。もうこれは沼だ。沼ですよねこれ?
カッコイイからカワイイになった時が沼、ってどこかで見た気がするけどまさに。
しかも、まさかまだまだ!この先の沼の段階があるとは、この時はまだ思ってなかったけど…。

とにもかくにも、このモスクワワールドが、ただのお楽しみファンから沼の隅っこの住人になった最初の一歩デス。(とは言え、まだまだお気楽なTV前観戦者ですけど)
これもひとえにファンの皆様の数々の素晴らしいブログのお陰です。本当にありがとうございます!!!

皆さんがハマった高橋大輔沼の第一歩はなんですか?